D’un soir triste
¥30,000($190.77)
残り1点
International shipping available
SAKEME: WISP
ESPRIT
TOME V — APRÈS L’ÉCHO
D’un soir triste《ある悲しき夕べ》
1918年3月15日、リリ・ブーランジェは24歳でその生涯を閉じました。《ある悲しき夕べ》は、そのわずか数か月前に完成した、最後の作品の一つです。同時期には対となる《春の朝》も書かれていますが、そこにあった生命の躍動は、この作品では深い静寂へと姿を変えています。
題名にある「悲しみ」は、激情や絶望を意味するものではありません。音楽は深い陰影を帯びながら、ゆっくりと沈み込んでいきます。そこには死への恐怖を直接語るような身振りよりも、避けることのできない終わりを見つめる眼差しがあります。病によって残された時間を知っていたリリ自身の境遇を重ねて語られることも少なくありませんが、この作品は個人的な告白を超え、人がいつか向き合う喪失そのものへと触れていきます。
旋律は長く歌い上げられることなく、短い断片となって現れては消えていきます。不安定な和声は最後まで完全な安息へ落ち着くことはなく、管弦楽は重く沈みながらも繊細な透明感を失いません。印象派の色彩感を受け継ぎつつも、その響きには戦争と病の時代を生きた20世紀初頭の切実さが刻まれています。わずか数分の作品でありながら、その密度はリリ・ブーランジェ芸術の頂点といえるでしょう。
《春の朝》が新しく開かれる世界を描いた作品だとすれば、《ある悲しき夕べ》は、いつか必ず訪れる終わりを見つめています。しかし、その眼差しにあるのは、失われることへの抵抗ではありません。戻らないものを戻そうとせず、終わったものを終わったまま受け入れること。音楽は安易な救済へ向かうことなく、悲しみを抱えたまま、その先へ進んでいきます。
《APRÈS L’ÉCHO》において、この曲が触れるのは、喪失の先にある受容です。悲しみが消えることと、それを受け入れることは同じではない。何かを乗り越えたから前へ進めるのではなく、失ったものを失ったまま抱えて、それでも生は続いていく。《ある悲しき夕べ》は、その避けがたい事実を、美化することなく見つめています。
-
size: F4 (333 × 242mm)
W-050
