Cinq poèmes de Baudelaire - I. Le Balcon
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SAKEME: WISP
ESPRIT
TOME III — CORRESPONDANCES OBSCURES
Cinq poèmes de Baudelaire - I. Le Balcon《バルコニー》
恋人と過ごした夜は、過ぎ去った後も記憶の中で生き続けます。ボードレールが見つめているのは、愛の出来事そのものではなく、時間によってそれがどのように変容し、精神の内側で永続するものとなるかということです。接吻、香り、夜の静けさ、肌のぬくもりは、単なる回想の断片ではありません。それらは失われた幸福を現在へ呼び戻し、愛がなお心の中に存在し続けていることを示す感覚の痕跡です。
『悪の華』において、愛は歓びだけで完結するものではありません。官能、喪失、憂愁を抱えながら、時間の中でより複雑な美へと変化していきます。この詩にある記憶も、過去を懐かしむだけのものではありません。現実には戻らないものだからこそ、心の中でより純化され、愛を一時的な経験から精神的な存在へと変えていきます。
1887年から1889年にかけて作曲された《ボードレールによる5つの詩》で、若きドビュッシーは、この記憶の持続を濃密な音楽として形づくりました。ワーグナーの影響を感じさせる半音階的な和声は、愛の陶酔と喪失感を分かちがたく結びつけています。一方で、声の旋律は過度に劇的な表現へ向かわず、フランス語の自然な抑揚に寄り添いながら、過去を静かにたどるように進んでいきます。
ピアノは単なる伴奏ではなく、記憶が立ち上がるための時間と空間を支えています。和声は明快な終止へ急がず、響きの中に過去と現在を重ね合わせます。そこにあるのは、恋人の姿を描く音楽ではなく、愛した時間が心の中でなお息づいていることを聴かせる音楽です。濃い陰影を帯びたこの歌曲には、後年の透明なドビュッシーとは異なる、初期作品ならではの官能と詩情が刻まれています。
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size: SM (227 × 158mm)
